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灰色の手帳 由香里 ―水底から― 第十四話『階段の前で ―― 開かれた脚』

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2011 / 06 / 13  Mon
由香里Ⅰ   
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 由香里は曲がりくねった階段の前で手足をついた。

 体を構え直そうとしたそのとき、先輩の手が由香里の尻の肉に飛びついてきた。乱暴にわしづかみにして、由香里を押さえ込んだ。

 背中に先輩の体を感じる。

 先輩の長い髪が、由香里の首筋を撫でた。
 裸の胸は、鍾乳洞のように垂れ下がっている。そのミルクのような白い胸を、階段から漏れる光が黄色く染めていた。
 同年代くらいの女の子たち…とはいっても、おそらく別の学校の子たちだろうが…の笑い声が響いている。由香里はその声を体全体で感じ取っていた。

「……由香里」

 その声は低く抑えられていたので、由香里が気づくまで、一瞬の間があった。先輩は何も言わない。

「……なんですか?」

 自分の体から声が出ることに、不思議な感じがする。

「今、どんな気持ち?」

 先輩が、そう問いかけた。

 鋭い痛み。先輩が由香里の髪をつかみ引っ張りあげたのだ。由香里は体を逃がそうとするが、背中に押し当てられた先輩の膝がそれを阻み、海老反りの格好になる。両手で髪を掴み、何とか阻止しようとするも敵わず、そのままぐいぐい引っ張られる。

 視界に、先輩の顔が写った。由香里は、普通ならあり得ない格好で、あり得ない体勢で先輩を見上げていた。
髪から力が消えたと思うと、今度は喉元に腕を回され、がっちりと固定された。そのまま後方へ引きずられると、あっという間に、足を前に投げ出し尻餅をついた格好にされてしまった。

 頭は先輩のおなかを枕に、顔は中腰で見下ろしている先輩の微笑を浮かべた顔に向けられている。

 由香里が手足をばたつかせ、何とか逃げようとしたが、重心を後ろに固定されているのでは、立ち上がるバランスも保てない。それでも無我夢中で、駄々をこねる子供のように暴れては隙を作ろうとするのだが、そうしているうちに先輩は上半身を使って由香里の頭をがっちりと固定してしまった。

 由香里がここまで必死になったのには、先輩の暴力への恐怖ももちろんあったが、何よりもこの体勢が、落ち着かなかったからだ。顔は天井に向けられており、投げ出された足の先の状況――いつ誰が登ってくるとも知れぬ階段を前にして――をうかがい知ることはできない。

 由香里は、先輩の目を真正面から見た。これほどまでに真正面から目を合わせたのは、今朝の因縁以来だろう。

 先輩は殆ど無表情といってよかった。その目にはむしろ厳しいほどの圧力があった。決して睨みつけるのではない。

 石像のように冷たく硬いまなざしで、由香里を見下ろしている。

 まるで自分が洞穴に隠れ住む醜い蜘蛛になったかのような気持ちだった。子供の悪戯心で光の下に晒され、観察されている。

 どういうわけか、由香里の脳裏に朋ちゃんの顔がよぎった。プールサイドから、子犬のように駆け寄ってくる姿。表情だけがぼやけていて、はっきりとしない。
 何故か悲しい気持ちになって、涙が溢れてくる。朋ちゃんは泣いてくれるだろうか、と由香里は思った。今の哀れな姿を見て、私をこれまでのように尊敬してくれるのだろうか――。

 突然、叫びだしたい衝動に駆られた。

 ……そして、由香里は本当に叫ぼうとした。

 と、由香里が息を思い切り吸い込むのを察知した先輩の手が、咄嗟に由香里の口を塞いだ。

 息ができない。

 恐怖にかられ、手足をばたつかせた。今度は先輩は、体全体で抱きかかえるようにして、由香里を押さえ込んだ。由香里は目を見開いた。視界がぼやけているのは、涙のせいだけではないだろう。意識が遠のいていく――。

――殺される……。

 視界が激しく明滅し始めた。微かに聴覚だけが、階下から何やら不明瞭なエコーを認識していた。まるで、プールの中にいるようだと、由香里は思った。
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