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灰色の手帳 由香里 ―水底から― 第十二話『盗まれた痴態 ――二人を結ぶ手綱』

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2011 / 06 / 09  Thu
由香里Ⅰ   
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 自らの体を意識した途端に、汗ばんだ股間の汗が揮発して、あるいは茂みに隠された割れ目から、何か淫靡なものが立ち上って、先輩に匂いを伝えているような気がした。凍った湖のひび割れが時折そうするように、由香里の恥ずかしい割れ目が、肉の崖同士が擦れる音を立ててやしないだろうか……そんな気さえした。

 由香里は決定的なものが晒されてからも、顔をやや汗ばませただけで、その顔はむしろさっきまでより蒼白だった。
 露わにされたものがあまりにも羞恥の限界を超えていた為に、現実感が沸かなかったせいなのだろうか。体は熱くなるどころか、さあっと小さな汗の粒が走り、それによって冷やされた。

 寒い…。

 それが由香里の感想だった。服を脱がされると、寒いんだ。

 ふと、先輩の指が、由香里の肌に触れた。臍の下、数センチ程のところだ。指は肌理細やかな肌をするすると滑って上昇し、臍のすぐ真下まで来た。そして直前で交わすと、臍を中心にぐるりと迂回するようにして、下っていった。 
 触覚と視覚の両方で、由香里は指の行方を追っていた。抗議の態度を取ることもなく、催眠術をかけられているかのように、ただじっと、先輩の指に感覚を集中させていた。

 指が茂みに近づいたとき、肉が撓んで、一瞬指の進行を阻んだ。しかしすぐに指は解放されると、磁石が引き寄せあうように、急に速度を上げ、茂みの中に滑り込んだ。柔らかい毛は何の抵抗もせず闖入者を迎え入れた。そして指は毛を巻き込みながら、うっすらとした裂け目に触れた……。

 快感が押し寄せた。それは由香里の心ではなく――今の由香里には、それが自分の体だということが不可解にすら思える、股の間の裂け目――それ自体に流れ込み、喜ばせた。

 反射的に体を仰け反らせようとしたとき、由香里は、裂け目が急に大きく幅を広げたような感覚を覚えた。まるで、

「もっとして」

 と言っているかのようだった。指はその隙に乗じて、裂け目のさらに深いところに入り込んだ。そして、由香里が最初の一撃に昏倒する間を与えるより先に、より大きな快感を探し当てた。

「ああっ……」

 その瞬間、何かの釦が押されたのだ。ついさっきまで、夜の住宅街のようにしんと静まっていた全身の血が、わっと騒ぎ立てた。

***

 ……熱い。あそこが熱い!
 由香里には、白い腹と盛り上がった丘の肌を透かして、マグマが燻っているのを見ることができるような気がした。
 尿意とは違う、もっと抑えの利かない、衝動的な欲求が、蒼白な肌の下から、地上や周りの肉をちくちくと突き刺した。

――駄目……出ちゃ駄目……先輩の眼と鼻の先で……あそこを濡らしては駄目……。

 視線を導線にして恥部の炎が燃え移ったかのように、由香里の顔が火照った。

 ついさっきまで寒さを訴えていた肉体は、だんだんと熱を帯びてきた。股間の熱は顔に燃え移り、そして血管を通してついには全身を暖めた。

 さらさらとした液体が、股間の裂け目の出口までを満たした。

――嫌……。

 現実から目を瞑り、暗闇に落ち込んでいた由香里の頭の中に、隠したい、という考えが煌いた。

――嫌だ、見られたくない……。

 太ももとお腹を引き寄せ合い、秘所の惨状を肉で隠そうとしたが、先輩の体重の乗った腕に阻まれ、上手く行かない。腹筋を強張らせて、先輩の圧力を押しのけようと格闘するも、やがて力尽きて、もたれこんでしまった。

 先輩がにやりと笑った。

 そして膝を押さえつけながら、由香里の首を巻きつけた腕を渾身の力で引っ張った。たちまち由香里の股間は、隠すどころかより一層露わになった。

 由香里を諦めが支配した。

 力を抜く。必死にもがいていた肉体は、クッションと先輩の体に身を任せるままになった。

 無抵抗な体は引き伸ばされる。

 隠すべきところを強調した哀れ極まりない姿……。

 白い肌と共に丸出しにされたヴァギナは、ほのかに湿り気を纏っていた。その湿り気を、拭取るかのように先輩の指がなぞった。

 その手つきはやはり優しく、母性すら感じさせた。先輩と後輩という、本来あるべき繋がりが、この所作によって再現されたかのようにすら思えた。二人が憎しみ合うことが無ければ、先輩が年下を優しく慰めるような、このような関係を築くこともあり得たのだろうか……。
 そのような想像は由香里を感動させ、せつない気持ちにさせた。

 もちろん、由香里はそれが罠だと知っていたが、その想像がうそだとしても、魅力的なものに思えてならなかった。

 憎い相手に恥ずかしい部分を弄ばれる現実に比べて、後輩への労りと慰めに溢れた視線の中で裸にされることは、幾分ましなことのように思えた。甘い妄想は、由香里を締め付ける堪え難いまでの痛みを伴った羞恥を、くすぐったい喜びに変えてくれた。

 そのことを、先輩も知っている。知った上で、由香里を誘惑しているのだ。先輩を「由香里の所有者」たらしめる、危険な罠に。由香里が先輩に心までも任せたとき、真の意味で由香里は先輩の手の内に落ちるのだから。

 先輩は優しさを演じ、しかし顔には、隠しきれない笑いを零している……。

 そのことにやはり由香里の方も気付きながら、しかしその演技を突っぱねることをできずにいた。その演技に固められた嘘の世界の役者に堕ちるのを堪えるのに必死だった。

 それどころか……由香里は、先輩の前で股を開きたい欲求すら覚えていた。

 そうすれば、先輩は愛情の篭った手つきで、由香里の秘所を拭いてくれることだろう……。


――駄目!


 心の奥底で、もう一人の由香里が叫んだ。

「由香里ちゃん」

 先輩が、甘い、囁くような声を、耳元で発した。
 一瞬、先輩の力が弱まった。由香里は、手を振りほどいた。秘所をぴったりと覆った。

「泣かないで」

 そう言うと、先輩は秘所を隠す手を優しく掴んだ。そして由香里の呼吸が落ち着くのを待つと、その手を押しのけた。

 押しのけるのに力は必要なかった。二人は今や協力し合って、由香里の手を秘所からどけた。それはまるで儀式のようだった。

 先輩は無言のままジーンズに手をかけた。
 先輩が引っ張るのを、由香里の手が阻止した。しかしその手は阻止しながら…時折わずかに先輩の動作を助けた。

 また、由香里は体をくねらせて抵抗した。しかしくねらせる中で、無意識の内にだろうか……尻を浮かして、ジーンズを腰から抜きやすいように計らっていた。
 由香里は着々と支配されていった。

***

 ジーンズは完全には抜き取られず、膝にたわめた状態に留まった。先輩は、敢えて、そうしたのだろうか。

 股の間に押し込められるようにして秘所を覆っていたTシャツの裾を先輩が掴んだ。

 由香里は再び、同じくシャツの布地を掴んで、それを阻止しようとした。しかしそれが演技であると先輩が気付いていることに、先輩が浮かべた笑みによって思い知り……由香里は手を離した。

 先輩は軽い筈の布地を、まるで夜中にこっそりと引き出しを開くかのように、おもむろに捲っていった。

 陰毛が、腿が作るV字のラインが、臍が、そしてうっすらと浮かんだあばらが露わになった。

 そしていともあっさりと、真っ白な胸は晒された。

 持ち上げた裾は、裏返しにして後頭部に引っ掛けるように、由香里の頭に被せられた。

 普段隠されずにいるところと、隠されているところの立場が逆転した、奇妙な感覚。Tシャツの薄い布の向こうに、うっすらと先輩の影が見えるだけで、由香里の視界はほぼ奪われた。冷気だけが、今ある状況を、皮膚を通して由香里に伝えていた。
太腿、臀部、腹部、胸……それら全てが、むき出しにされていた。肩や背中、膝から下にかろうじて残った服の感触が風呂に入る際の裸との違和を強調していた。

 すなわち、由香里は裸になる為に服を脱いだのではなく、視姦によって辱められる為に、裸に剥かれていたのだった。

 Tシャツを被せられ、視界を奪われたことで、暗闇で声を潜め聞き耳を立てるあの生物の本能が、由香里の中に呼び出されたのかもしれない。隠すべき場所を全て晒されたにも関わらず、由香里は冷静さを完全に失うことはなかった。もちろん、哀れな現実の中で理性を忘れることができないなど、残酷な拷問でしかなかったが。

 若者向けのポップミュージック。由香里も好きでよく聞いていた女性歌手の歌声が、スピーカーから流れている。低めの声で、日本人歌手特有の、妙な衒いの篭った英語を歌い上げていた。意味不明な異国の言葉の羅列が、由香里には自分を謗る呪詛のように聞こえた。
 そして時折乱入する、階下の客達の笑い声……。それを聞くたびに、由香里の心臓は、潰れそうな程に縮み上がる。意識が遠のいて、気絶しそうになる。

――こんなところで……。

 先輩が、テーブルの下に仕舞われた由香里の足首を掴んだ。そして力ずくで、座席の上に引っ張り上げようとした。足を暴れさせて抵抗する。

 途端に足を掴む手に力が入った。足首の皮を巻き込んでねじり上げる。痛みに飛び上がった膝がテーブルを打った。その音に由香里は竦み上がる……。
先輩が再び足を引き上げようとしても、もはや由香里は抵抗を諦め、むしろ自分からテーブルの下から足を抜いた。足を抜くとき、腿が持ち上がって、体が捩じれを縒り戻し、先輩の方に全体が向き、由香里の最も汚い穴が、一瞬間無防備になった。由香里はすぐにそれに気付くと、素早く足を抜ききると、足を組んで覆った。

 人間の一番汚い部分。自分ですら触るのを躊躇われる部分。先輩の支配欲と嗜虐欲を満たすメインディッシュとして、恐らく故意に最後まで残されたであろう部分。
 もう由香里は十分に汚されてしまっている。水泳部のエースとしての誇りも、若々しい美の誇りも、無残に切り刻まれ、葬り去られた。最後に残ったのは、女としての誇りだった。

 いや、ひょっとしたら、それすらももう死んでいるのかもしれない。未だ尚、由香里に羞恥を味あわせ苦しめるのは、死者が布団に生者だったころの匂いを残すように、女としての意識の匂いが、体に染み付いたままになっているだけなのかもしれない。

 だったら、全てを終わらせてしまいたい。むしろ最後の守りを破られることで、完全に落ちぶれてしまいたい。とどめを刺して欲しい。由香里はそう思っていた。ただ、自分からそれを捨てるようなことはしたくなかった。飽くまでも最後まで、恥じらいの似合う少女をでありたかった。たとえそれが、演技でも。

 だから由香里は、先輩が手を伸ばすのを待った。冷たい手で由香里の足首を掴み、股を広げ、笑みを浮かべた眼で由香里を舐め回すのを待った。無力な自分への失望と、下劣な敵への侮蔑を胸に抱いて。興奮が、少女の頬を紅色に染めていた。眠り込むような表情で目を閉じて、白い顔に紅の懸かった由香里の姿は皮肉にも、毒リンゴを齧り王子様のキスを眠りながら待ち続ける、白雪姫を思わせた。

 先輩の手は一向に伸びてこなかった。

 最後の瞬間であろうと、いかなる美化も許すまいという、先輩の意の表れなのだろうか。それほどまでに、先輩は残酷な女なのだろうか。
由香里は、先輩に恥丘を撫ぜられた時を思い出した。慈しむような、あの優しい手つき。

――あんなのは演技だ。

 分かっている。だが、ひょっとしたら……。
 由香里は別の可能性を思案していた。もしかしたら、由香里の運命を受け入れた表情が却って先輩の哀れみを喚起し、手を止めさせたのかもしれない。

――涙で潤んだ目で許しを請えば、それだけで許してくれるのでは……?


――ああ、自分は、こんなに卑屈な女になってしまった……!

 惨めな気持ちに浸りながらも、由香里は瞼に涙を貯めた。そして恐る恐る、頭に被ったシャツを捲ると、涙で滲んだ目を開いた。そのときだった。


 カシャッ!


 黒く鈍く光る円状の何かが見えたかと思うと、作り物っぽい機械音と同時に光に包まれ、由香里は再び目を瞑った。準備していた涙が溢れ、頬を伝った。

 アナログ風を装った、そのうそ臭い効果音を放ったものの正体を、瞬時のうちに悟っていた。

 カメラ。携帯。


――撮られた。
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