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灰色の手帳 由香里 ―水底から― 第十一話『陰部 ――犯される領域』

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2011 / 06 / 09  Thu
由香里Ⅰ   
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 二階から人が消え去るまでの間に、由香里は衣服を整えた。
 由香里が衣服を整えたのは、「最終手段」への下準備に他ならなかった。逃げるのだ。力ずくで。何なら、叫んで助けを呼んだっていい。

 先輩が口火を切った。それは、意外な言葉だった。

「……京子、悪いんだけど、もう帰ってくれる?」

 驚いたのは由香里だけではないらしい。京子はさっきまでのにやにや笑いをさっと引っ込めた。

「やっぱこれって、水泳部の問題だし。元水泳部、とは言っても、もう京子は部外者でしょ」

 淡々とした口調で言ってのける先輩を見つめる京子の顔を、まるで、餌を取り上げられた犬のようだ、と由香里は思った。縋るような京子の視線を振り切り、先輩は由香里の方を向いた。

「それに……これからやることは、ひょっとしたら、由香里のプライドをとんでもなく傷つける行為になるかもしれないからさぁ」

 深刻なことを匂わせておきながら、のんびりとした、楽しむような口調だった。言い終えると、由香里の頭の上に、手のひらを軽く乗せた。

 由香里の頭によぎった想像がどのようなものか、言うまでもない。

 先輩は、頭の上に乗せた手を滑らせ、髪を撫でた。
 それはまるで、問題の答えを言い当てた生徒を褒めるかのようで、由香里の背筋を寒気が這い登った。

「ほら、お金は私の奢りでいいからさ。ね、お願い」

 言葉とは裏腹に、先輩の声音には不思議な強制力があった。

 京子は物惜しそうな顔を隠し切れないようだったが、やがて傍らにあった鞄を手に取り、無言で立ち去った。
 自分をいたぶる敵が、二人から一人に減ったことになる。しかし由香里は、むしろ京子を引き止めたい思いだった。

 京子がいなくなってからも、先輩は押し黙ったまま、由香里の頭をゆっくりとしたペースで撫で続けた。何かのタイミングを計っているかのようだった。
 由香里は先輩の眼を見ることが出来なかった。全身の、震えが止まらない。
 突然、先輩は頭を撫でていた手を由香里の首に回し、肩を掴んだ。そして、まるで、恋人に甘える無邪気な女のように、由香里に向かって倒れこんだ。

 咄嗟に身を堅くする。されるがまま、由香里の体は壁に押しつぶされる。先輩は、首に回した腕を更に絞り、もう一方の腕を腰に絡ませ、上半身を由香里の体に密着させた。

 手で先輩の二の腕を掴んでいたが、その手を、引き離す勇気が持てないどころか、むしろ震えによってこちらの恐怖が伝わることが恐くなって、由香里はその手を離した。行き場を無くした両腕は、布団の中で丸まった子供がそうするように、胸の前で折り畳まれた。軽く握った拳で顔を隠すように。
 先輩は、丸まった由香里の肩に、うつ伏せになった猫のように、喉を置いた。由香里のうなじに、先輩の喉首が巻きついた。
 丁度由香里の耳のところに、先輩の唇が重なった。先輩が呼吸をするたびに、吐いた鼻息が耳をくすぐる……。

***

 背中には、お互いのシャツ越しに、先輩の胸の感触が感じられる。先輩の豊満な胸を、ブラジャーが確かに覆っている堅い感触を感じて、由香里は泣きたい思いがした。由香里に恥の意識だけでなく、罪悪感さえ与えた。先輩が当たり前の嗜みとして、ブラを付けているという実感は、由香里に自分のやったことのはしたなさを思い知らせた。

 ――どうして、こんな奴の前で、自分が小さくならなければいけないの?

 その理不尽さは、震えるばかりだった由香里に怒りを喚起させた。先ほど思い付いた考えを、実行に移すときがきたのだろうか。唯一残された反撃の一手……先輩の腕を振りほどき、カバンをも放り捨てでも逃げるのだ。

 しかし、由香里の考えを読んだかのように、先輩は先手を打った。

 首に回した手を、由香里の前にやる。その手には、真っ赤な携帯が握られていた。親指で、折りたたまれた携帯を押し広げた。
 画面には、やはりあの画像が表示されている。

 体をきゅっと縮めてしまう。
 ああ、嫌だ。見たくない。

 首に回されていた先輩の腕がおもむろにずれて、Tシャツの由香里の胸の膨らみを覆った。先輩は腕を擦りつけるようにして、由香里の乳房を揉んだ。まるで、寝ている子供を起こさないよう頭を摩る母親のような、ゆっくりとした、優しい手つきだった。
 女の腕は、別の女の胸にうずまって、餅をこねるように形を変えた。由香里は、まだ誰にも触られたことの無い部分を、憎き女に弄ばれるのを感じていた。しかしそれは、不思議と不愉快ではなかった。

 先輩の腕は堅くて、熱を感じさせなかった。先輩は元々大柄である上に、水泳で鍛えられた肉体を持つ。経験の未熟な由香里には、油断すると男の腕と錯覚してしまいそうだ。

***

 由香里を蹂躙する喜びに目を輝かせている先輩の傍らで、由香里は拗ねた子供のような倦怠感に包まれていた。

――何がそんなに楽しいのよ……。
 
 自分のあまりの哀れさに、目に涙が溜まった。涙は水のようにさらさらしていて、目を瞑るとあっけなく頬を流れ落ちた。
そのとき、先輩が一時的な無邪気な仮面が消え去り、歯を剥き出して笑った、嫌らしい魔女の本性を先輩が覗かせるのを、由香里は感じた。

 それは長い間、先輩の中で燻っていた感情に相違ない。日の目を見ることを、ずっと夢見ていたのだろう。
 憎たらしい、生意気な女を肉体的精神的に徹底して蹂躙してやりたいという、その本望を果たそうとしているのだ。赤ん坊が母親の胸にしゃぶりつくように、それは由香里の体を貪り始めた。

 由香里は瞼を開いた。コーラのカップが、涙で滲んでいた。

 急に体を抱く力が強まって、由香里は体を強張らせた。先輩の手がすっぽりと、由香里の左胸を覆った。そして指全体でしごくように、胸を揉み始めた。

 私、今、先輩に抱かれている……。乳房を弄ばれている……。同性に体を預ける不思議な感覚に、由香里は酔った。由香里は未経験だったが、先輩の愛撫が、男が女を愛するときのそれとは違った性質のものであることを悟っていた。感触を愉しもうとする男のそれとは違って、先輩の愛撫の仕方は、由香里の性の高ぶりを煽り、性的な感覚を挑発しようとするようだった。そこに愛は無く、むしろ悪意に支えられた冷徹な計算すら感じられた。由香里の体の強張りに合わせて、手つきも次第に激しく舐るようになっていった。

 先輩のもう一方の手が、由香里の太ももの隙間に強引に差し込まれた。いよいよ、女の部分にまで肉体的な接触が迫っている……。

 そう思うと、恐怖が頭の中を支配し、由香里は小さく叫び声を放った。
 途端に、胸を揉んでいた手が由香里の口を塞いだ。呼吸困難に陥った由香里は暴れようとするが、痛みを伴うほどの強い力を塞いだ手に込められ、無理やり後ろに引き倒された。混乱にさらなる混乱が合わさることで不思議な効果が発生し、由香里は押し黙った。

 視界には、天井だけが映っていた。

 由香里が落ち着いたのを確認すると、ゆっくりと元の姿勢に戻される。塞がれていた口が自由になった。

 由香里は必死になって酸素を取り込んだ。ただし、飽くまで音を立てぬよう、気を配りながら。先輩の威嚇に、無意識のうちに屈していたのだ。

***

 肉体への陵辱が再開した。

 先輩は再び、由香里の体を座席の仕切りに向かって押し付けた。足はテーブルの下に仕舞われたままなので、由香里は体を捻った、苦しい態勢を強いられた。太ももを上げて、股間を防御するような姿勢を取る。せめてもの抵抗のつもりだったが、そこに力は入っていなかった。

 先輩は由香里の膝に腕を乗せ体重をかけることで、易々と由香里の防御を解いた。そして、由香里の膝まで顔を持ってくると、一方の手で、Tシャツの前部を軽く捲った。

 臍が露わになったのを、由香里は腹に流れ込んだ冷気で知った。

 とうとう、悪魔に体を売り渡す時が来たのだ。全身を、さあっと冷たい汗の粒が覆った。

 唇を噛み、目を瞑った。

 ……何かが弾ける音がした。ジーンズの留め金が外されたのだ。

 決して見まいと決めていたのに、うっすらと目を開く。待ち受けていたかのように由香里の顔を下から覗き込んでいた先輩と、目が合った。
 先輩は、勝ち誇った笑いを、見せびらかすように顔に貼り付けていた。

――一度は死んだと思った何かが蘇った。胸の中で小さな爆裂が起こり、炎が沸き起こると、うねるようなその炎の舌先が胸をちくちくと突いた。

 しかしその炎は……腰がジーンズの留め金によるゆるい束縛から解放され……そして第三者の手によってファスナーを降ろされる……その堪えられないような服従感の中で、萎えていった。

 先輩はTシャツを捲ったまま、片手で器用に引き手をつまみ上げ、少しずつ、股間を隠す最後の砦を切り裂いていった。務歯が中指で押し当てられ、由香里の秘所は金属の冷たい感触を味わった。

 この恥丘に押し当てられた薄い歯を隔てたところに、先輩の柔らかい指がある……。

 そして今にも、最後の恥部を覆うベールが、取り去られようとしている……。

 手でジーンズの裾を引っ張り上げ、股間を腹の中に畳もうとするのを、先輩は毅然とした態度で跳ね除けた。由香里の体を強引に押し戻すと、もう一方の手で、必死に恥ずべき場所を隠そうとする由香里の手首を掴み取り、切れ長の大きな目で、由香里を思い切り睨み付けた。由香里はジーンズから手を退けた。居場所を無くした手は、中空でぷるぷると震えていた。

 引き手が、裂け目の終わりに達した。ファスナーは全開にされ、かろうじて重なった遊びの布地によってのみ、由香里のヴァギナは覆われていた。

 そして、その時がやってきた。

 先輩の指が、ジーンズの隙間に差し込まれた。
 その時、再び、胸の中の炎が燃え上がった。

 気丈だった少女の誇りの残骸は、首を鎖で繋がれた、躾の悪い番犬のように、非力だった。

 それは、秘密を侵そうとする侵入者に、始めこそ怯えの混じった怒号を上げて襲い掛かったものの、繋がれた鎖に動きは阻まれ、侵入者に射すくめられると、何もすることが出来ぬまま、うな垂れて座り込んだ。

 かくして侵入者は、番犬の目の前で、悠々と目的を達した。

 先輩はジーンズの裂け目の底を引っ張って、ずっと蔭に横たわってきた少女の恥部を、その聖域が人目に晒されるにはあまりにも相応しくないハンバーガーショップの照明の下に、引きずりだしたのである。

 白い、雪のような肌が露わになった。体の中で、最も明かりのもとへ晒されることもなく、暗い蔭の中で白く純粋な色を保ち続けた肌。可愛らしい臍の下のゲレンデのような白い単調さは、茂みによって破られる。その薄さから隙間に白い肌が見え、薄墨を垂らしたような美しい灰色のグラデーションとなっていた。

 それは今にも雪の中に溶け出しそうで、儚い美しさを備えていたが、同時に白いゲレンデに一点だけ雪が降り損ねて、土が見えているかのような、何やら危険な罠のような感じも与えた。実際注意深く見れば、茂みの中に、まるで氷の裂け目のような、あるいは落とし穴の入り口のような、短い裂け目が走っているのに気付くことだろう……。

 由香里は一部始終から目を離すことをしなかった。自分が丁寧に剥かれるのを、青白い顔で見守っていた。少女は悪夢の来訪から目を逸らさず、むしろそれを出迎え……それでいて、自分が見ている光景が、現実のものだと信じることが出来ずにいた。
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